暑い夏も少しづつ過ぎ、夜の虫の音が賑やかになった。
五穀豊穣を祈願する夏祭りも終り、
山里は本格的な収穫の時期に入る。
森もたくさんの実を実らせ、次の世代の繁栄に繋げていこうとする。
又そこに住む生き物達も落ちた実を蓄え、厳しい冬を待つ。
こんな森の中の静かな営みとは別に、山の気配は春とは又違う味わいを見せる。
雪が溶け、芽吹きが始まる瑞々しい印象の春とは逆に、
秋は一年という時間の記憶を錦に染める。
そしてやがてやってくる冬を前に、枯葉をぱらぱらと脱ぎ捨てていく。
至極当然のことだが、山はいつの時代のどんなときでも春夏秋冬を繰り返す。

幼い頃の秋の夕刻、親父の後を必死について山を降りた経験がある。
夕日は差していたが、山の道は暗かった。
初めての経験。
不安・焦燥で今にも泣き出しそうな子供の私を楽しい会話と大きな手で導いてくれた。

今、私はあの頃の親父と同じ年代になった。
親父の優しさをふと想い出しては感じいる。
私は息子にこれからも愛情を注いでやれるだろうか。
小さな息子の手を大きな私の手で包んであげられているだろうか。
明日のことなど知る由もないが、
この刹那な想いを大切に持ち続けて生きたいと願う。
しかし、瞑想とは裏腹に時間は残酷でしたたかだ。
最近特に時が早く過ぎるのを感じる。
この事を古希を過ぎた山の先生に話をしたら、
この年になったら一年は瞬きするくらいあっという間だヨ。と愛しく笑った。
先生の手は野良仕事でいつも泥だらけだが、
モノづくりの手はそんな姿がよく似合う。
手から手へとその技を引き継いできたモノづくり。
瞬きするくらいの一生を、モノづくりに捧げ始めた私の手。
悠久の歳月を経た森とそれを支える森の民の手。
山に暮らす人々の手。
全ての収穫は手から生まれ、手を通して食べる。
小さな手を精一杯広げる子供たち。
そして親の手で子供をしっかりと抱きしめる。
論より証拠、例え会話が出来なくとも
手を動かすことで理解できることを私は知っている。
手は人と人との繋がりを記憶する。
それぞれの円を成就しながら。
これからも手から始まるモノづくりの対話は続いていく。
未来永劫繰り返される森の営みと春夏秋冬私達人間の生活、
親と子の関係、
そして決して完成することのない未熟で稚拙な私のモノづくり。

カンパイ!

 
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 森のクラフト  手から始まる親子の会話

 

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1 マエストロたちのヤクザな"手"
2 想像は果てしなく続いていく
3 "手"で触って始めてわかるモノの質感/決して見た目だけでは判断できない
4 野鍛冶は野鍛冶らしく。
私もそうであり続けていたい


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