1 用意するもの
時計のムーブメント・時計の針・木の板・ペンキ・ハケ・ 紙やすり・ドリルドライバー・ 8~9㎜ドリルビット・水性 ボンド
2 木の板に穴を開ける。
板はムーブメントの真棒の長さに合わせた厚さにする。
3 水性ペンキで表情をつけてからムーブメントを組む。
(必ずムーブメントの使用を確認しよう)
4 完成
一日の一番大切な時間をポイントに拾ってきた実や花をボ ンドでつける。
春の山の散策は木々の芽吹きや野花を楽しめ、
ときにはアイコやシドケなどの山菜を
少しだけ摘む。
山の間から覗く空を見上げ、静かに呼吸をすると、
ここに住むたくさんの生物の営みや、
水の音、風の音、草花の匂いを
感じることが出来る。
こんな時は、ほんの一瞬時間を忘れる。
というよりも、時間が止まった空間を
ふわふわ歩いている。
どのように表現していいか分からないのだが、
森羅万象全てに感謝をしたくなる。そんな気分だ。
時間といえば、そのことをあまり気にかけない
仙人のようなデザイナーがいた。
戦後の日本のモダニズムを
家具デザインから支えてきたデザイナー。
私達の知らない木工技術まで知っていて、
それを図面に落とし込む。
手書きのきれいな原寸図面。
彼が残したグッドデザインの家具はたくさんある。
とりわけ私はブナの曲木アームチェアが
代表作だと思っている。
彼がデザインした自邸も又、晩年の名作だ。
そんなまさに"仙人"のような人だ。
いつも私達の仕事場へ遊びに来ては
アドバイスや指導をしてくれる。
そして、ほぼ毎回時間を忘れ酒を飲んだ。
ジャズのようにスウィングしながら
デザインの講義を奏でる。
さながらセロニアス・モンクのような
軽妙なリズム感。
当時20代そこそこだった私は
ハードバップで対抗しようとするが、
到底セッションにはならず、
仙人のソロが延々と続く。
夜が更けるまで紫煙に巻かれた。
生前、彼との小さな約束は、
私の仕事場から見える山の頂の
山桜の花が咲いたら合掌すること。
今年は3回目の合掌をした。
目を瞑り、仙人と過ごしたやりとりを
拾い集めるように想い出しては、
あまりにカッコ良すぎて師の生き方を深く考える。
私にはとても貴重な時間だ。
そんな、時を刻む時計を作る。
時計を作りながら、時の大切さを子供に教えたい。
出来れば一日という時間の中で、
子供と親が一番大切に思っている時間を
ポイントにしてみる。
夕食の時間、お風呂の時間、絵本の時間、
おやつの時間など、
皆で笑って一緒に過ごせる時間を
貴重な時間と思えるように。
1 用意するもの
拾ってきた実や枝、落葉など・端材や小さな角材・釘・ゲ ンノウ・ボンド・ノコギリ
2 額を作る。
釘とボンドで組み立てる。
3 自分の感覚に任せて、様々な形を作る。
4 完成
ボンドをつけて完成。
木工は加工中の失敗は禁物。
一度失敗したものを、溶かしたり
ぐちゃぐちゃに丸めてやり直すことが出来ない。
形を仕上げていくには、引き算、引き算で
足し算は出来ない。
ちょっとでもミスがあれば、
意匠的な象嵌くらいしかなく、
美しく続く木目をごまかすことは出来ないのだ。
ミスをした時は憂鬱になる。
それに加え、加工精度は
0.2mmから0.3mmを要求される。
ノギスと言う計測道具は木工にとっての必需品。
そして木工は考えながら作り上げていく。
"治具"という第2の"手"は
木工機械や手道具と一緒に使い、
自分の理想の形や加工精度を決めていく。
だからこの"治具"も
人それぞれ独自に考えながら制作する。
だからいつも考える。
立ち止まってはぶつぶつ独り言を言う。
これは木工家のクリエーション。
他から見れば奇妙奇天烈だが、
同業者からは当たり前の光景。
集中しているので
あっという間に時間は過ぎていく。
これがモノづくりの面白いところで、
"考える"ことをなくしたら
単なる"労働"になってしまう。
"労働"が嫌で"木工家"に転身をするのだ。
そんなことを繰り返しながら、
仕上がっていく家具は
早くとも1週間分の時間が費やされる。
たまには、この緊張感から抜け出したくなる。
ボーっとするのもいいかも。
山や川、海などに遠出して、
ゆっくりと散策しながら、
ゆったりとした気分になりたい。
あわよくば温泉に浸って、
旨い料理とビールを傾けながら、
体と頭をリラックスさせたい。
ところが遠出をすると、
モノづくりの悲しいサガかな、
散策どころか懸命になって
形の変わった石ころを拾ったり、
右手に図鑑を持ち、草木の葉の形状をジッと眺め、
休む暇もなく研究家に変身している。
"考える"自分がそこにはいるのだ。
最近は自分の性格を落ち着かせるため、
コラージュを作る。
自分の持つ記憶や、
憧景の断片を作品の中に込める。
せっせせっせと拾い集めた
木の実や流木を切り貼りし、
自分だけのアートとして、大切にするのもいい。
コラージュも又"考える"クラフトだ。